「読み聞かせ」のガイドラインの矛盾点を読んで

前回のエントリーに関連した話として、著作権教育フォーラムブログさんのところで、意見が述べられています。

これらのエントリーを読んで私が思ったのは、ガイドラインについて指摘されている点が、多くはガイドラインの形式面についてだなあということでした。
矛盾点とあったので、ガイドラインに示された指針が現場に適用されたときに、法解釈上ではどのような問題があるのかを指摘されるのかなあと、私が勝手に期待しちゃいました。

指摘された問題点

ガイドラインの何が「矛」で、何が「盾」なのかのご説明がないのは、勢いのある文章から察するに、最初に矛盾と書いた手前、引っ込みがつかなかったということでしょうか。それなら、これ以上は触れないこととして。
ガイドラインには、ご指摘のように問題点があるのでしょう。

  • ガイドラインの目的(矛盾点その1、その3)とか、
  • 用語の齟齬や権利の帰属(矛盾点その2)とか、
  • 蛇足部分(矛盾点その3)とか、
  • ガイドラインを受けた手続き上の不備(矛盾点4)とか、
  • ガイドラインの体裁(矛盾点その5)

など。
でも、全体から見て細かい点だといえば細かい点だし、理解可能とも思えます。

用語について

このガイドラインというのは、読み聞かせをする人に対して、著作権法上で気をつける点について、著作権法をベースとして指標とするものと考えられます。
したがって、あまり法律に詳しくない、読み聞かせをする人を対象とするのなら、用語の厳密な使い分けを指摘されても、全体としてはあまり影響がないように思えます。

ガイドラインの目的について

また、ガイドラインには、「著作権法違反」、「権利侵害」及び「使用禁止」の語句が、まったく使われていないことに留意すべきでしょう。
ガイドラインは、利用者の行為を、違反だとか、侵害だとか、禁止すべきとか、思って書かれているのではないのです。
ガイドラインは利用者の行為を侵害と考えている」と推量して、その考えを非難するのは、いささか不用意です。
ガイドラインは、利用者の行為を不当に制限しようとするものではないのです。
また、一定の行為には許諾が必要だとしても、それは金銭のためだ、とは限らないでしょう。
許諾が要るというのは、金をくれということと同義ではないのです。許諾条件は著作権者次第なので、使用の態様に応じて、無料で許諾するなどの柔軟な対応が可能だろうと思います。

手続きについて

次に、手続き上の不備についてですが、ガイドラインを出した日本書籍出版協会は、著作権者ではないということを理解したほうがいいと思いました。
具体的な手続きの仔細については、別途に、各出版社に委ねたということでしょう。
各出版社、各著作権者によって許諾条件は異なるでしょうから、ガイドラインで統一的な手続きが記されていないとしても、それはそれで理解できます。
別途に、出版社ごと、又は権利者ごとに、許諾条件の目安が公表されれば良いのですけれど。

ガイドラインの体裁について

各出版社、各著作権者によって許諾条件は異なるでしょうから、それをまとめたガイドラインとしては、最大公約数的な意見になってしまいます。そのことから、ガイドラインは、最大公約数的な権利範囲として、著作権法に従った基準になったのでしょう。
著作権法は、権利とその制限について書かれていますから、著作権法に従ってガイドラインを書いたとときには、許諾が要る、要らないという書き方になってしまいます。これでは、法律に慣れない人は、身構えてしまうでしょう。
ですから、今回公表されたガイドラインの体裁は、いかがなものかと、もう少し柔らかく書けなかったかと、私も思います。

あらためて、ガイドラインの問題点

このガイドラインの公表によって、読み聞かせの現場に混乱が生じるとするなら、今まで何となく著作権法には触れないと思っていた行為が、許諾を要するとなっている場合ではないでしょうか。例えば、OHPによる拡大表示と出版権との関係は、検討する余地があると思えます。
こうした具体的事例について、ガイドラインによる法解釈を問題とする声が現場から上がればなあと思います。

参考リンク

Yunyさんの「Yunyの鉄は、熱いうちに打て。」に、一連のエントリーがあります。
とても、まとまっていると思います。
これらのエントリーのうち、最後のエントリーにリンクを貼ります。
http://d.hatena.ne.jp/Yuny/20060519/p1