著作物に関する権利の「二階建て制度」について、その後の感想

真紀奈氏の「二階建て制度」の位置付けが分からない。
実現可能かどうかはさておいて、理想論の一つとして提案されたのか。
実現を目指す政策論の一つとして提案されたのか。
真紀奈氏の提案からは、必ずしも読み取れない。
http://opentechpress.jp/opensource/06/07/06/2138220.shtml


真紀奈氏が、理想論の一つとして提案されているのなら、条約に矛盾するなどと、私が実現可能性に言及したのは的外れだったのかも。
私は、著作権法を勉強している身なので、どうしても実現可能性について考えてしまいます。

日経朝刊6月30日の記事

遅ればせながら、日経新聞の掲載されていた境真良氏のコラム記事を読んだ。
読んだ後であっても、新制度は、ベルヌ条約の規定、特に存続期間を、最低限として守るべきだという私の考えに変わりはない。
この記事には、次のような一文がある。

登録は任意であるため、仮にこの制度で定めるべき諸規定が著作権法の規定の一部と矛盾しても、それは関係者の契約や権利放棄を擬制したものと見なせるので問題にする必要がないから、規定の自由度は極めて高い。

著作権法との矛盾については、この一文の内容に同意する。
著作権法と新立法とは、民法に対する特別法として、対等の関係にあるから。
しかし、ベルヌ条約との関係でみると、ベルヌ条約のほうが新立法よりも優位だから、ベルヌ条約に矛盾するような立法は認められないだろう。
また、著作物の保護が、最初は著作権法により保護されるとしても、著作権法と新立法とが、排他的な関係にある場合には、新立法についても、ベルヌ条約を遵守する必要があると考える。


民法の範囲であれば、契約自由の原則があるから、公序良俗に反しない限り契約は自由だ。しかし、契約自由といっても、強行規定に反する契約は無効であることに留意する必要がある。
強行規定でない、任意法規であれば、法律に反する契約をすることもできるだろう。しかし、強行規定に対しては、法律に反する契約をすることができない。


ベルヌ条約に規定された著作物の存続期間は、自己執行的な規定と解され、たとえ各国の著作権法に存続期間の規定がなくても、各国は、その規定を遵守することが求められると解される。
そのようなベルヌ条約の存続期間の規定よりも短い存続期間とし、その存続期間経過後は、著作物の保護が消滅する新立法ができるだろうか。私はできないと考える。

新立法の趣旨や意図への意見ではなく

これまで私が書いてきたことは、新立法の趣旨や意図を批判するものではないです。
私は、著作権法のあるべき姿とか立法論とかについての意見をしたかったのではなく、立法技術について意見を述べていたことを理解して欲しいです。