読み聞かせとガイドラインの件

http://www.asahi.com/life/update/0513/006.html
私は、読み聞かせとは無関係の、著作権法を勉強している人の立場です。そういう立場で以下のことを書きます。

ガイドラインを読んだ感想

この記事に書いてあるガイドラインを読んだ。その感想を箇条書きで。

  • 表現が硬い。
  • 法律に慣れない読み手は、身構えてしまうかもなあ。
  • でも、内容は、著作権法で規定する内容と同じだろう。ざっと読みだけど。
  • つまり、このガイドラインは、著作権法で規定する権利を強化するものではなく、権利を再確認するもの。
  • ガイドラインが有ろうが無かろうが、読み聞かせの際に著作権法より守るべき内容だった。
  • このガイドラインによって、読み聞かせが萎縮するというなら、その萎縮するような読み聞かせは、著作権法を気にしていなかった人たちということではないか。
  • 著作権法を配慮して読み聞かせをしていた人たちは、ガイドラインによって不安が解消されたのではないか。
  • ガイドラインに異を唱えるなら、ガイドラインによる著作権法の解釈よりも利用者の行為を広く認めるべきという理由の理論構成が必要だろうなあ。
  • ガイドラインが、もう少し柔らかく書いてあれば、反応は異なっていたのではないか。

読み聞かせの実際って、どんなものだろう

私は、実際の読み聞かせが、どのように行われているかを知らない。
子供の母親たちが、自分の子供を含む子供たちに、ボランティアで(事実上の無報酬で)読み聞かせているのだろうと想像した。
そんな無報酬の読み聞かせなら、著作権者に許諾は要らないんだし、もちろん金銭の支払いも要らない。ガイドラインでもそうなっている。
そんなガイドラインに反発するということは、実際の読み聞かせは、実益を兼ねた、もっとビジネス寄りのものなのだろうか(素で疑問)。

権利侵害と思っているから、許諾を要するのではない

ライブドアの市民記者の記事
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1958649/detail
なにも、著作権者は、読み聞かせが権利侵害と思っているから、許諾を要するとしているのではないだろうに。
読み聞かせを侵害と思っているのなら、すでに民事や刑事で係争になっていますって。少なくとも著作権者から注意喚起等のアピールがあるはずです。そんなニュースは、私が知る範囲では見聞きしていない。


「使うときには、ひとこと言ってね。」
著作物の使用許諾というのは、こうしたコミュニケーションをしようということでしょう。もちろん、必要に応じて金銭交渉もあるのだけれど。
頭ごなしに許可無く使っちゃダメと思っているのではない。
著作権者と使用者とのコミュニケーションは、あっていいと私は思う。
使いたい人がいて、そういう連絡が来れば、通常の著作権者は、よろこんで許可するのではなかろうか。
金銭的に折り合いがつかないこともあるかも知れないけど、使われないのは結局、著作権者が損するだけのこと。
また、読み聞かせが、許諾手続きの煩雑さのために盛り下がるとは、私にはあまり予想できない。出版社が、許諾手続きを煩雑に思うなら、その出版社は、ある程度は勝手に使って下さいという許諾をするのではないか。
許諾の手続き、内容の不明瞭さを指摘する人もいるだろうけど、ガイドラインガイドラインなんだし、一律に料金等を決めるのが好ましいかは、別途考える必要があるでしょう。