JALがビジネスモデル特許でANAを提訴

職場でビジネスモデル特許に携わっている人が、休み時間に少し話題にしてた。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20040727/147800/

 JALの持つ特許の正式名称は、「ID情報利用の搭乗券発行システム」(特許番号:第3179409号)。登録日は2001年4月13日。JALのWebサイトでも内容を確認できる。特許の出願はそれより2年さかのぼる1998年5月だった。

この記事が正しければ、特許発明の内容は、特許庁電子図書館で、特許番号をキーワードに簡単に調べられる。
ふむ。
JALの特許出願を代理した事務所は、協和さんですね。と、そんなところを先に気にしちゃったりします(書誌事項の中の弁理士名を見れば、代理した特許事務所は分かります。)。
特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるので(特許法第70条)、その特許請求の範囲の記載を見てみましょう。

【請求項1】航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータと、各ユーザ機関に設けられた汎用パソコンと、空港に設けられた搭乗券発券機と、各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報が記録されたID記録媒体と、を備え、各ユーザ機関の汎用パソコンは、搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、搭乗券発行機関のホストコンピュータは、汎用パソコンからの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる予約受領機能と、成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、搭乗券発券機から送信される搭乗券の発券結果情報を蓄積する情報蓄積機能と、前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能と、を有し、空港の搭乗券発券機は、ID記録媒体の入力を通じて利用者ID情報を読取るID読取機能と、読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する照合機能と、照合した結果に基づいて対応する航空券予約情報に基づく搭乗券を発券する発券機能と、搭乗券発券の事実をホストコンピュータに送信する発券結果送信機能とを有する、ことを特徴とするID情報利用の搭乗券発行システム。
【請求項2】搭乗券発行機関のホストコンピュータは、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する際に、料金を割引くことができる一括精算割引機能を有することを特徴とする請求項1に記載のID情報利用の搭乗券発行システム。

せっかくだから、特許請求の範囲の読み方を書きましょうか。
特許請求の範囲の記載を見慣れてない人は、文章が長い!と思うでしょうね。
長年の慣行で、一つの請求項は、一つの文で書くようになっています。
発明の対象は何かは、各請求項の文末に書いてあります。本件だと「ID情報利用の搭乗券発行システム 」です。
発明は、大別して物の発明と方法の発明とがあります(特許法第2条第3項)。「システム」は、審査上、物の発明として取り扱われます。だから、ID情報利用の搭乗券発行装置のように、装置の発明だと考えてもらってもいいです。
物の発明の記載には、いくつか手法はあるのですが、特許の対象物の構成要件(簡単に言えば、パーツ)を、ずらずらと挙げて、それを「〜と、」で繋いでいく手法があります。
本件においてもこのような手法で記載されていて、概略的にホストコンピュータと、汎用パソコンと、搭乗券発券機と、ID記録媒体と、の4つの物を備えるシステムになっています。
見出し符号を入れてインデントを入れて箇条書きにすると、次のような感じかな。


ID情報利用の搭乗券発行システム。
1. ホストコンピュータを備える
…1-1. 航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられているものである
…1-2. 予約受領機能を有している
……1-2-1. 予約受領機能とは汎用パソコンからの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させるものである
…1-3. 待機指令機能を有している
……1-3-1. 待機指令機能とは空港の搭乗券発券機に情報を送信するものである
………1-3-1-1. 送信する情報は成立した航空券予約情報である
………1-3-1-2. 送信する情報は航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報である
…1-4. 情報蓄積機能を有している
……1-4-1. 情報蓄積機能とは搭乗券発券機から送信される搭乗券の発券結果情報を蓄積する機能である
…1-5. 一括精算機能を有している
……1-5-1. 一括精算機能とは航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる機能である
2. 汎用パソコンを備える
…2-1. 各ユーザ機関に設けられているものである
…2-2. 予約申請機能を有している
……2-2-1. 予約申請機能とは搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報を表示して航空券予約申請を行う機能である
3. 搭乗券発券機を備える
…3-1. 空港に設けられているものである
…3-2. ID読取機能を有している
……3-2-1. ID読取機能とはID記録媒体の入力を通じて利用者ID情報を読取る機能である
…3-3. 照合機能を有している
……3-3-1. 照合機能とは読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する機能である
…3-4. 発券機能を有している
……3-4-1. 発券機能とは照合した結果に基づいて対応する航空券予約情報に基づく搭乗券を発券する機能である
…3-5. 発券結果送信機能を有している
……3-5-1. 発券結果送信機能とは搭乗券発券の事実をホストコンピュータに送信する機能である
4. ID記録媒体を備える
…4-1. 各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報が記録されているものである