W-SIM訴訟

http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/27/news054.html


原告の特許番号(特許第3048964号)が分かっているのなら、特許電子図書館で調べられる。
特許請求の範囲の第1項は次のとおり。

【請求項1】アンテナにより受信される受信信号をスピーカから出力する音声信号に変換する機能と、マイクに入力される音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と、操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と、表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と、前記電子回路を含み、移動体通信端末に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと、前記カートリッジに設けられ、前記移動体通信端末との間で信号を入出力する入出力部とを有することを特徴とする電話送受信ユニット。

本件は、審査官から、特開平9-149109号公報、特開平8-70272号公報及び特開平8-9006号公報を引用して、特許法第29条第2項の拒絶理由通知を受けたが、補正により特許となっている。


まずは、W-SIMが、本件特許の技術的範囲に属するかを検討する。技術的範囲に属しなければ、基本的に特許権の侵害とはならない。
W-SIMが、請求項1の構成要件を満たしているかをみる。
W-SIMは、電話送受信ユニットであるか?→Yes。
W-SIMは、電気回路を有しているか?→Yes。
W-SIMの電気回路は、受信信号変換機能を有しているか?→たぶんYes。
W-SIMの電気回路は、送信信号変換機能を有しているか?→たぶんYes。
W-SIMの電気回路は、操作信号処理機能を有しているか?→たぶんYes。
W-SIMの電気回路は、表示信号生成機能を有しているか?→たぶんYes。
W-SIMは、電気回路を含むカートリッジを有しているか?→Yes。
W-SIMは、移動体通信端末との間で信号を入出力する入出力部を有しているか?→Yes。
構成要件の対比を少し端折ったけれども、W-SIMは、請求項1の要件を満たしていると考えられる。
それなら、W-SIMは技術的範囲に属しているかというと、もう少し詳しく検討する必要がある。特許請求の範囲の文言は、明細書の記載を参酌しなければならない場合があるから。
ここで、あらためてW-SIMについてみると、W-SIMは、モジュール内にアンテナを内蔵している。

 W-SIMは、PHSの通信機能からアンテナ、電話帳メモリなども内蔵するモジュール。

これに対して、本件特許の明細書には、カートリッジに含まれる電子回路にアンテナが含まれるとは書かれていない。この相違点を、どう評価するかが問題となる。
電子回路にアンテナが含まれている場合も本件特許の技術的範囲に属するのか、それとも、電子回路にアンテナが含まれている場合には、本件特許の技術的範囲に属しないのか。
これを考えるには、明細書を参酌する必要がある。
本件特許の請求項2には、カートリッジを収容する移動体通信端末が記載されている。この移動体通信端末には、アンテナが付いている。
また、段落番号0019には、次のような記載がある。

送受信アンテナ22や受信アンテナ42のように電話送受信ユニット側に設けると良好な特性が得られないもの、液晶表示部20、スピーカ58、マイク60、操作部70、及びバッテリ76のように各々の移動体通信端末においてスペックが異なるものであるので、PHS端末10側に設けられている。

これらの記載をどう評価するか。この記載は単なる一例で、アンテナをカートリッジ内に含んでもいいのか。それともアンテナをカートリッジに内蔵は否定的なのか。
もちろん、原告側と被告側とで意見は分かれるところだと思う。両方の弁理士さんの意見を聞きたいところ。
私の意見は、、、今は差し控えときます。