追加説明

(4月2日追加)
当時も今も、洋楽で問題になるのは、欧米盤の並行輸入が規制されるか否かではないでしょうか。もちろん、消費者としては、安価なアジア版が入手できるのが好ましいのですが、現在、洋楽の並行輸入盤がアジアから輸入されているかは私は分かりません。
そして、この欧米盤の洋楽レコードが、将来的に、なし崩しで規制されるかというと、そうはならないだろうと私は考えています。
根拠は、条文の「著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り」という文言です。
不当の基準は、文化庁の「還流防止措置を行使するに当たっての実務上の留意事項等について(通知)」に書いてあります。
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/kanryuu_ryuuijikou.html

4 要件④関係
(1)不当の基準の運用
  「(権利者が)得ることが見込まれる利益」とは、商業用レコードの売上額そのものではなく、いわゆるライセンス(使用許諾)料をいい、国外頒布目的商業用レコード1枚当たりのライセンス料を、それと同一の国内頒布目的商業用レコード1枚当たりのライセンス料で除した数が0.6以下である場合(以下「不当の基準」という。)は、当該利益が不当に害されるものとして取り扱うこととすること。

ライセンス料が国内の60%以下である場合に、「不当に害される」に該当するということになっています。
この60%というのが、ちょうどアジア版と欧米版との間の数値になっているようです。
根拠は、例えば、この法律を審議した第159回国会の衆議院文部科学委員会 第23号(平成16年5月28日(金曜日))に次のような発言があります。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615920040528023.htm

○素川政府参考人 今回の還流防止措置に係ります要件の一つであります、利益が侵害される場合ということにつきましては、午前中よりその考え方というものを申し上げさせていただいているところでございます。
 今、先生から、データの一端を示せというお話でございます。
 手元にある資料を少し御紹介させていただきたいと存じますけれども、例えば日本を一〇〇といたしました場合に、ちょっと三つほどの具体的なレコードにつきまして御紹介させていただきますと、これはライセンス料ということでございますけれども、アメリカでは九四・二、イギリスでは一〇五・〇、ドイツでは一二三・五、フランスでは一四四・二というような具体的なレコードがございます。
 また、もう一つのレコードにつきましては、例えば日本を一〇〇といたしますと、アメリカが八八・七、イギリスは一四八・五、ドイツが一〇八・八、フランスが一三〇・八というようなレコードがございます。
 また、もう一つのレコードについて御紹介させていただきますと、アメリカが九七・九、イギリスが一六六・五、ドイツが一二六・二、フランスが一四八・一という、これが一つのライセンス料の比較でございますけれども、この委員会へどのような形で資料をお出しするかにつきましては、御相談させていただきたいと存じております。

このことより、私は、欧米版の洋楽盤が輸入権で規制されないのは、レコード会社の口約束による自主規制ではなくて、条文の適用要件を満たさないだからと考えています。