Velvet Crush

benliにおいて、Velvet Crushの"Stereo Blues"という音楽CDに関して、Parasol Recordsの通販ページに、 (no export to Japan)と記載されていることについて言及されている。
この音楽CDについてのParasol Recordsでの記載は、benliが示唆するように日本でレコード輸入権が立法化されたことに基づくものであろうか。


benliによると、

 このレコードはお前の国ではSony Recordから発売されることになっており、我々がこのレコードを日本国内へ販売することは契約上禁止されているから、日本へは輸出できないんだ ということが書いてありました。

ということなので、そうした日本への輸出が契約で禁止されていることが、今まで無かったのかどうかで、レコード輸入権が立法化されたことに基づくものかどうかが判断できると考えた。


この点については、今までもあったと理解している。
ソースは、5月4日に新宿ロフトプラスワンで行われた、「実態を知るためのシンポジウム」のテキスト起こし文から。
佐々木氏の発言を引用(テキスト化されたCCfA.info & airheadさんに感謝します。)。
http://ccfa.info/yunyuuken.txt

あのー、それが、ただですね、その、先ほどまぁ、この問題で一番こう出ている輸入盤を入ってくるのを禁止するっていうことはですね、あのー僕の所も弱小メーカーのようなものでして、あのー、まぁ、みなさん中にはご存じの方がいると思いますけれども、アメリカの「セルジョッキー」というレコードレーベルとライセンスをしてですね。「トータス」というバンドの日本盤のCDとか出したりしている訳なんですけども、あのー、我々もですねそのレーベル側との申し合わせでは、えー、輸入盤が日本に入ってこない様にしてほしいという申し入れをしています。
で、これはどういうことかというと、えーライセンス契約というものの中にそういう、その申し合わせをするということが入っているからです。つまり我々は、ライセンス料を払うのに、たいしてですね、あの、そういったその輸入盤が同時に入ってこないということをまぁ、レーベル側にお願いをしているという現状があります。で、あのーなので、これは別に我々に特異なことではなくてですね。
おそらく、比較的、小さなレーベルも最近、その国内盤を出しているライセンス業者っていうのはそういった、むしろ、小さいところであればあるほどそういうことしている部分というのがあると思います。でー、ところが、あのーですのでそういった形でその、あの、まぁ、なかば、マンツーマンでですね。あのー輸入盤が入ってこないようにするということはしているというのは、以前からずっとあった訳なんですけれども、

この文脈からすると、輸入盤が日本に輸出されないようなライセンス契約をすることは別に特異なことではなく、以前から行われてきたことのようである。
そうすると、Velvet Crushの新譜が日本輸出禁止とされているのは、日本でレコード輸入権が立法化されたためとは、云えないと思う。


付言すると、Velvet Crushの"Stereo Blues"というアルバムのジャケットに、日本への輸出を禁止する旨の表示があるかどうかは、必ずしも明らかではない。
上掲benliでは、Parasol Recordsの通販ページに、 (no export to Japan)と記載されている事実をもって、条文の「情を知つて」の要件を満たすと解釈をされているように読める。
しかし、以前この日記で書いたように、音楽CDのジャケットに記載が無ければ、いくら通販ページに記載があっても、著作権侵害にはならないというのが、私の解釈であるし、立法者の解釈でもある。


なお、このVelvet Crushの件については、音楽配信メモにも書かれている。
http://xtc.bz/data/2004/07/02.html

もちろん、従来の契約慣行の中でやっている輸入制限に、法律的お墨付きが付いてしまうことで、今後そういう力関係がどのように変わっていくのかって部分は重要だし、そこのところはきちんと検証していかなきゃならないんだろう。

だからこの現象だけみて「ほら! あいつらもう輸入権使い出しやがった!」って怒りをぶつけるのはちょっと短絡的なんじゃないかと。

この記載に同感です。


一方、melma!blog [The Trembling of a Leaf]のエントリーにおいて、

※法律施行前にも関わらず、早くも「NOT EXPORTATABLE TO JAPAN」表記のあるCDが米国で、しかも日本レコード協会の正会員企業であるソニー・ミュージックエンタテインメントの意向を受けてリリースされたことに対する厳重な抗議と、国会の内外でその可能性を否定し続けた吉川著作権課長の責任を問う意見を出しましょう。

と述べているのは、いささか早計に思える。