見解の相違点について

次に、yucoさんからご紹介のあった小倉さんのBlogは、少し前から見ておりました。
それで、yucoさんが小倉さんと私との見解について、「情を知る」の判断に相違があると考えられたのは、私の4月21日の日記及び5月4日の日記を読まれた結果と思量しますが、上述のように、sheepmanさんへの回答について、私の思い違いの可能性があります。
ですから、相違点は「情を知る」の所ではないかも知れません。


あらためて小倉さんのBlogを読んで、小倉さんと私とで見解の相違があると思った点は、「国外頒布目的商業用レコード」には、日本での販売を禁ずる旨の表示が、音楽CDのジャケットに表示されている必要があるかどうかです。
小倉さんは、音楽CDのジャケット等に「日本国内頒布禁止」等の文字が印刷されていなくとも、国外頒布目的商業用レコードとなるという見解です。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2004/04/post.html

1.この法案では、「国外頒布目的商業用レコード」を、「当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの」と定義しています。したがって、音楽CDのジャケット等に「日本国内頒布禁止」等の文字が印刷されていなくとも、発行者が「当該音楽CDは専ら国外において頒布することを目的」として当該音楽CDを発行していれば、それは「国外頒布目的商業用レコード」となります。

私は、国外頒布目的商業用レコードには、(原則として)「日本国内頒布禁止」等の文字が印刷されている必要があるという見解です。
http://d.hatena.ne.jp/shiranui/20040421#p1

そう考えると、レコード輸入権が適用されるためには、音楽CDなどのジャケットに、「日本での販売を禁ずる」旨の表示が明記されている必要があるでしょう。

小倉さんの解釈は、条文中の「国外頒布目的商業用レコード」について、「当該音楽CDは専ら国外において頒布することを目的としている旨が音楽CDのジャケット等に印刷されているされているもの」という明文の規定がないから、その反対解釈として、音楽CDのジャケット等に印刷されていなくてもよいという解釈なのでしょうか。
また、国会での質疑に関して、小倉さんBlogには次の記載があります。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2004/04/post_3.html

今回の質疑ではっきりしたのは、音楽CD上にシールを貼らなければならない云々というのは、「そうしなければ基本的に『情を知って』いたことにつき著作権者等が立証責任を果たせないから」というのが唯一の根拠だということですね。

私の解釈は、上記の質疑の内容とは反しますが、そのような明文の規定が条文中になくても、音楽CDのジャケット等に表示されていることが必要なことは、条文から導き出せると思っています。それは、条文中における「国外頒布目的商業用レコード」の定義、すなわち、「当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの」からです。
「専ら国外において頒布」ですから、この文言は、我が国で販売禁止であることを意味しています。そしてそのような音楽CDが、国外において、我が国で販売が禁止されていない音楽CDと混在して販売されるのですから、外観上、見分けができる必要があると考えます。そうでないと、輸入業者は、不意打ちで著作権侵害だとされるおそれがあり、輸入業者にとって酷に過ぎるからです。
このように外観上、見分けができる必要があるということから、ジャケット等に我が国で販売禁止であることが表示されている必要があると私は考えます。


私が思うに、条文中において、国外頒布目的商業用レコードにつき「日本国内頒布禁止」等の文字が印刷されている旨の明文の規定がないのは、その表示を輸入業者等が剥がすことによって本条文の適用を免れるような、脱法行為を排除するためではないでしょうか。
そう考えて、私は、国外頒布目的商業用レコードには、原則として「日本国内頒布禁止」等の文字が印刷されている必要があり、また、仮に文字が剥がされているときには、例外的に、その音楽CDが元来、文字が印刷されていたものであって、文字が剥がされたものだということを著作権者等が立証することで、本条の国外頒布目的商業用レコードだと認められるのではないかと思います。
小倉さんの解釈のように、発行者の意図さえあれば、明示しなくても「国外頒布目的商業用レコード」だというのでは、本条文における「国外頒布目的商業用レコード」という適用要件が、有名無実化してしまうように思えるのですが、いかがでしょうか。