2ちゃんねるの投稿規約

2ちゃんねるの投稿規約が変わったらしい。
書き込む時にブラウザに表示される投稿確認は、次のようになっている。

投稿確認
・投稿者は、投稿に関して発生する責任が全て投稿者に帰すことを承諾します。
・投稿者は、話題と無関係な広告の投稿に関して、相応の費用を支払うことを承諾します
・投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)、掲示板運営者に対し、無償で譲渡することを承諾します。ただし、掲示板運営者は、投稿者に対して日本国内外において無償で非独占的に複製、公衆送信、頒布及び翻訳する権利を投稿者に許諾します。また、投稿者は掲示板運営者が指定する第三者に対して、一切の権利(第三者に対して再許諾する権利を含みます)を許諾しないことを承諾します。
・投稿者は、掲示板運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。



私は2ちゃんねるに疎いので、各板のローカルルールがどうなっているかは知らない。それで、上掲した投稿確認の内容だけで考えてみる。


この投稿規約によれば、書き込んだ内容についての著作権は、投稿者に帰属するのではなくて、2ちゃんねる掲示板運営者に帰属する。
したがって、2ちゃんねるに書き込まれた他人の文章をコピペするには、コピペ先が2ちゃんねる外であるか、2ちゃんねる内であるかを問わず(2ちゃんねるの同一スレ、他スレや、同一板、他板であっても)、掲示板運営者の許諾が要るということ。
まとめWiki等で2ちゃんねるのログを記載するのも掲示板運営者の許諾が要る。
まあ元来、他人の文章をコピーして他所で貼り付けるのは、著作権法上は問題があったのだけど。


アスキーアートについても同じ。
アスキーアート(AA)が著作物であるかについては議論があるが、私は、AAであっても絵画の著作物になり得ると考えている。
上掲した規約が施行された後に、2ちゃんねる内で新たに創作されたAAの著作権は、2ちゃんねる掲示板運営者に帰属する。
誰もが使える、ネットの共有物であり続けるかは、2ちゃんねるの運営者の心積もり次第。


似たような規約については、ブログ界だと2年前にgoo Blogの規約で話題になった。
internet watch
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/03/11/2402.html
itmedia
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0403/10/news052.html
スラッシュドット
http://slashdot.jp/articles/04/03/12/0718211.shtml

2ちゃんねるのネタは投稿者のもの(規約改定前)

(注記: 6月2日に記載)
itmediaに記事がある。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/01/news066.html
タイトルが「2ちゃんネタは誰のもの? スレ紹介ブログの閉鎖相次ぐ」になっている。
誰のものと問われたら、著作権法と投稿規約に従って考えればいい。
1つのスレで複数人の投稿者の掛け合いで面白いネタができたのなら、その著作物は、各投稿者の共同著作物になる(著作権法第2条第1項第12号)。この共同著作物の著作権は、著作者である投稿者が原始的に取得する。
2ちゃんねるの投稿規約(改定前)によれば、書き込みの著作権は各投稿者が保持することになっていたので、2ちゃんねるのネタは、投稿者のものということになる。
ひろゆき氏は、投稿された著作物についての非独占的な使用権を、投稿者から取得していたので、ひろゆき氏がネタを使用することは自由だ。
そして、ひろゆき氏は、投稿規約(改正前)に基づいて、第三者が、2ちゃんねるのネタを使用することを許諾することができる(使用権の再許諾)。つまり、第三者2ちゃんねるのネタを使わせることができる。


ログ使用についてのひろゆき氏の見解は次のリンク。
http://www.2ch.net/

2ちゃんねるのデータの利用に関して、原則的に自由ですが、 2ちゃんねるのデータ自体を利用して対価を取る行為はご遠慮下さい。

どこかに書いてあったと思って探していて、昨日は見つからなかった。2ちゃんねるのトップページに書いてあるとは盲点だった。
えっけん氏のブログのコメントを読んでいて気付いた。
http://ekken.blog1.fc2.com/blog-entry-162.html


2ちゃんねるのトップページにある上掲した文章によれば、2ちゃんねるのログを有料で閲覧させたりすることは禁止されている。しかし、ログ使用は原則として自由だ。
ログを公開しているサイトのアフィリエイトについては検討を要するが、データ自体を利用して対価を取っている行為には該当しないと私は考える。
(2ちゃんねるへの何らかのチャージバックはあっても良かったとは思うけど)


以上のことから、2ちゃんねるログまとめサイトが、2ちゃんねるのログを使用することについて、著作権法上で合法か違法かを考える。
ログについての著作権は投稿者が保持し、
投稿者が、ひろゆき氏に使用権を許諾し、
ひろゆき氏が第三者に対し、原則的に自由に使っていいという、使用権の再許諾をしている。
したがって、2ちゃんねるログまとめサイトのログ使用は、著作権法上は合法であったと考えられる。


アフィサイトへの転載が禁止になったのであれば、それはログの使用について、今までとは許諾条件が変更されたということになろう。

改定前の規約において2ちゃんねる運営者はログの使用を禁止する主張をすることができるか

(注記: 6月3日に記載)
できない。
2ちゃんねる運営者は著作権者である投稿者から非独占的な使用権を受けている。
この非独占的な使用権は、債権的な権利であって、使用権者(2ちゃんねる運営者)に対して著作権が行使されないことを、著作権者に求める権利(不作為請求権)である。
このような不作為請求権に基づいて、第三者に対して物権的な権利である使用差し止めを主張することはできないし、損害賠償請求をすることもできない。
使用差し止めや損害賠償を請求できるのは、著作権者である投稿者のみである。

追記(6月4日)

少し誤解を生じるかもしれないので、追記します。
2ちゃんねる運営者が、ログの使用を禁止する主張をすることができないというのは、著作権法に従って考えた場合のことです。
著作権法によらないローカルルールを作ることは自由です。
逆に言えば、2ちゃんねる運営者が、改定前の規約に従うログについて、そのログの使用を禁止する主張をするということは、著作権法によらない主張だということです。