契約による規制とレコード輸入権による規制との区別

前回書いたVelvet Crushの新譜のように、Web通販の画面で(no export to Japan)と表示されている場合に、その根拠が、契約によるものなのか、それともレコード輸入権に基づくものなのか、分かりにくいという意見がある。
私としては、そんなに難しい話ではなくて、音楽CDのジャケットに、日本への輸出を禁ずる旨や日本での販売を禁ずる旨が書いてあったら、レコード輸入権に基づく規制であり、ジャケットに書いてなかったら、契約に基づく規制であると考えていいと思う。
ジャケットに書いてあったら、税関によってレコード輸入権に基づく輸入差し止めがされる可能性が高まるからです。
レコード輸入権の条文では、音楽CDのジャケットに記載が有るか無いかによって条文の適用がある否かが大きく異なり、記載があれば、洋楽の並行輸入盤でも著作権侵害となり得る。
私が以前、洋楽の並行輸入著作権侵害となる可能性は低いと考えたのは、洋楽の音楽CDのジャケットに、前述のような記載をする可能性が低いだろうと考えたのが根拠となっています。
本国の音楽CDのジャケットに、わざわざ書くだろうか。書かないだろうと予想しました。
しかし、この予想の確実性は、そんなに高くないかも知れないとは、私自身も思っています。
既に本国の音楽CDについて、no export to Japanなどと記載されている音楽CDが存在するのであれば、私の予想は間違っていることになる。

日本盤を出すライセンス契約の条件に、ライセンサーが本国の音楽CDに前述の記載を求め、その求めに応じて本国の音楽CDに記載されることが起こり得るのかどうなのか……。
この辺の事情は、よく分からない。
条文において、著作権侵害になる要件の一つに、「音楽CDのジャケットに記載があること」が、洋楽の音楽CD並行輸入が禁止されないための担保あるいは歯止めになっていると思うのだが、果たして担保あるいは歯止めになり得るのかを、国会での法案が可決される前に、文化庁との間で又は国会で、議論できていたら良かったのにと思う。


海外のメジャーレーベルがレコード輸入権を行使しないと言ってるのは、洋楽の音楽CDのジャケットに、日本への輸出や日本での販売を禁ずる旨の表示をしないと言っているのだと思う。
もし、洋楽の音楽CDのジャケットに、日本への輸出や日本での販売を禁ずる旨の表示がされるようになったら、輸入禁止がされないための歯止めになるのは、レコード協会などの声明や意思表示のみとなる。
レコード協会などの声明や意思表示は、口約束みたいなものだが、言質となり得るものである。