輸入権の要件としての国外頒布目的商業用レコード

5月30日の日記の続きです。
いわゆるレコード輸入権の要件の一つに、「国外頒布目的商業用レコードであること」があります。
この「国外頒布目的商業用レコード」とは何かを、法案からもう一度書いてみましょう。

国内において頒布することを目的とする商業用レコード(以下この項において「国内頒布目的商業用レコード」という。)を自ら発行し、又は他の者に発行させている著作権者又は著作隣接権者が、当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの(以下この項において「国外頒布目的商業用レコード」という。)

それでは、同一の内容のアルバムについて、欧米のレコード会社からライセンスを受けた日本のレコード会社から日本盤が発行され、かつ、上記レコード会社経由で米国盤が直輸入されているときに、なお、米国国内で市場で流通している音楽CDは、上掲した「国外頒布目的商業用レコード」に該当するでしょうか。
いいえ。該当しません。
そのような音楽CDは、上掲した「国外頒布目的商業用レコード」のうち「専ら」の語を欠いたものだからです。
該当するかどうかを確認するために、語句をあてはめてみましょう。
「日本盤が発行され」ている音楽CDであるから、「国内において頒布することを目的とする商業用レコード」には該当します。
その日本盤は、「欧米のレコード会社からライセンスを受けた日本のレコード会社」が発行しているから、「著作隣接権者」が「他の者に発行させて」いることにも該当します。
同一の内容のアルバムについての音楽CDは、「当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコード」に該当します。
「米国国内で市場で流通している」から、「国外において頒布」されています。
しかし、「専ら」だとは云えません。


同一の国内盤が発行されている海外の音楽CDは、自動的に「国外頒布目的商業用レコード」に該当するのではないのです。
そのような海外の音楽CDは、「日本に輸入し販売してもよい」音楽CDか、少なくとも「日本に輸入し販売してもよい」音楽CDとは区別がつかない音楽CDなのですから。
日本に輸入し販売することが禁止されている訳ではありません。
したがって、「国外頒布目的商業用レコード」であるためには、海外の市場において、「日本に輸入し販売してもよい」音楽CDと区別できるものである必要があるといえましょう。