特許が"明白"

http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20061736,00.htm

 今回のFTCの報告書は、300人以上のパネリストが参加し、24日間に及んだ公聴会の結果をまとめたものだ。同報告書の提案内容は以下の通り。

  • 米議会は、特許商標局において、新たな行政手続きを通じてより簡単に特許に対する異議申立てを行えるようにするための法律を制定する。
  •  特許が"明白"か否かを評価するための法的基準を厳格化する。
  •  特許を認める前に競争を阻害する可能性がないか検討する。

この記事の内容はさておき、「特許が"明白"か」って、意味が分かるだろうか。
CNETでの英文の元記事を見れば直ぐに分かるけど、"obvious" を"明白"って訳しているんですよね。
Think GNUでも、obviousを明白って訳してあるけど、特許業界では「自明」と訳すので、ここでも自明と訳して欲しかったなあ。いや、「特許が"自明"か」と訳してあっても、普通の人は意味が分からないかも知れないけど。
obviousは、米国特許法において、特許要件に関する第103条に使われている語です。
米国特許法第103条(a)は、次のようになっています。
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/consolidated_laws.pdf

35 U.S.C. 103 Conditions for patentability; non-obvious subject matter.
(a) A patent may not be obtained though the invention is not identically disclosed or described as set forth in section 102 of this title, if the differences between the subject matter sought to be patented and the prior art are such that the subject matter as a whole would have been obvious at the time the invention was made to a person having ordinary skill in the art to which said subject matter pertains. Patentability shall not be negatived by the manner in which the invention was made.

訳文は、次のリンクをご覧ください。
http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/bm_patent_law.htm#S103
この条文では、特許出願された発明が、公知発明と完全同一ではない場合であっても、相違点が、同一技術分野に携わる者にとって自明な程度に過ぎない場合は、特許されないことを規定しています。
このような、米国特許法における特許要件の一つとしての非自明性は、日本特許法第29条第2項に規定する進歩性と、ほぼ同じだと考えられています。
特許法第29条第2項

特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

それで、CNETの元の記事に戻って。
「特許が"obvious"か」とは、要するに、発明が、公知発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)にとって、容易に考えつくことができるかという意味ですな。