阪神タイガースの硬軟両作戦についての記事

7月22日に書いた日記の「阪神優勝」という登録商標に関して、サンスポの記事なんですけど。
http://www.sanspo.com/tigers/top/tig200307/tig2003072515.html

 千葉市内の男性が昨年、『阪神優勝』の商標登録を申請し、特許庁が認可。阪神球団が、この文字を使ったグッズを無断で作れない状況になっていた。現在はその権利を放棄するよう、弁理士を通じて男性と交渉中。

 まず軟着陸を目指すが、交渉決裂となれば正面衝突だ。「他人の商標に似たものを使ってはいけない」という不正競争防止法に基づいて、異議を申し立て。今後、無断でグッズを製作販売した場合、損害賠償訴訟を行う可能性も示唆した。

この記事の内容は、球団社長の会見の受け売りだろうか。それとも記者の不正確な要約があるのだろうか。
法律の制度から見ると、この言っている内容がよく分からない。
だって不正競争防止法には、異議の申し立てという制度がないんですよ。
不正競争防止法に基づくのであれば、グッズを製作販売した行為の共同不法行為者に商標権者が該当する旨を警告し、警告にもかかわらずグッズを製作販売したグッズを製作販売した場合には、過失があったとして民法第709条又は不正競争防止法第4条に基づいて損害賠償請求することになる。
一方、商標法には、商標登録の異議申し立て制度というのがある(第43条の2)。
相手方の「阪神優勝」という登録商標が、他人の周知商標に似ているのであれば、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたことになるから、異議申し立ての理由にはなる。
しかし、この異議申し立ては、商標が登録されて公報が発行された日から3か月以内にしなければならないので(商標法第43条の2第1項)、現時点では申し立て期間を徒過している。だから異議申し立ては、今からすることはできない。
現時点でできるのは、商標登録の無効審判の請求でしょう(同法46条)。
 
結局、記事にある阪神タイガースの硬軟両作戦というのは、交渉の場で相手方に次のことを言うのだろう。
「あなたがライセンスしたグッズを製作販売する行為は、不正競争に該当するのだから、グッズは製作販売できず、金儲けなんてできないですよ。それに、商標登録の無効理由がありますよね。だから商標権を放棄しましょう。もし、聞いてくれなかったら、裁判所に損害賠償請求訴訟をするし、特許庁に無効審判の請求をしますよ。」
 
なお、今日の日記では、「阪神優勝」という登録商標が他人の周知商標に似ているか否かを、私は判断していない点に注意してください。つまり、阪神の作戦が正しいかどうかは、判断していないということです。