「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の改訂審査基準(案)
特許庁のパブリックコメント募集に、補正における、いわゆる新規事項に関する審査基準の改訂案が出ている。
http://www.jpo.go.jp/iken/p_standard_new_matter.htm
改訂審査基準(案)のポイントは以下のとおりです。
なお、改訂審査基準最終版の公表日以降に審査される平成6年1月1日以降出願の案件については、改訂された審査基準に基づいて審査がなされます。
- 補正ができる範囲を「当初明細書等から直接的かつ一義的に導き出せる事項」としている現行審査基準を改め、「当初明細書等の記載から自明な事項」とすることとし、より適切な法の運用を図る。
- 当初明細書等に記載された発明の具体例だけでなく、発明が解決しようとする課題等、記載内容を総合的に考察することにより補正の適否を判断することとし、上位概念化、下位(中位)概念化を伴う補正に適切に対応可能とする。
- 改訂審査基準の理解を深めるための事例を充実した。
明細書等の補正ができる範囲を、「自明な事項」とすることは、きわめて妥当だと思う。
というか、現行の「直接的かつ一義的」という運用が、珍妙であった。
平成5年の法改正により、補正ができる範囲は、特許法第17条の2第3項において、 「……願書に最初に添付した明細書、請求の範囲又は図面……に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と、された。
この規定は、いわゆる新規事項を追加するような補正を禁止する規定であり、欧米におけるnew matterの追加禁止と国際的な調和を図ったものとされる。
しかしながら、この条文の特許庁での運用、すなわち審査基準では、新規事項を追加するものでない事項が、「出願当初の明細書等から直接的かつ一義的に導き出せる事項」と、なった。これは、審査の迅速化という要請から、補正が、新規事項の追加を含むか否かの判断に、審査官をして頭を使わなくても良いようにとの考えがあったものであろう。
しかし、新規事項かどうかは、このように機械的に定まるものではない。
その結果、欧米の出願で認められるのと同様の補正をしても、日本では新規事項の追加だとして認められない場合もあった。このような問題があったからこそ、今回の審査基準の改訂があったのだろう。
元来、新規事項を追加しない補正とは、自明な事項の範囲内での補正のことであり、今回の改訂は妥当だと思う。