特許関係の人からみた著作権

白田秀彰先生の「ご冗談でしょう、牧野先生」を拝読して、少し補足したくなったので書きます。
http://orion.mt.tama.hosei.ac.jp/hideaki/mrmakino.htm

知的財産権産業財産権について

白田先生は、知的財産権をベン図で示されている。
似たような図は、特許庁にも掲載されている。
http://www.jpo.go.jp/seido/s_gaiyou/chizai02.htm
そして、知的財産権のなかで、特許庁が所管の権利、すなわち、特許権実用新案権意匠権及び商標権を、特許関係の人は、「産業財産権」と呼ぶようにしています(私自身は、「産業財産権」という語に、未だに違和感ありますけれど)。
産業財産権と呼ぶ起源は、平成14年7月3日に決定された知的財産戦略大綱において、従来の「工業所有権」という用語を「産業財産権」に改めることとなったからだそうです。その旨が次のリンクに書いてあります。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/hiroba/sangyou_txt.htm

発明者の名誉権について

既に「ナガブロ」で説明されていますので、そちらを参照してください。
http://nagablo.seesaa.net/article/22117847.html

万国著作権条約について

ここは、牧野先生が、日本が締結しているWIPO著作権条約(著作権に関する世界知的所有権機関条約)を、万国著作権条約と、勘違いされているのではと、突っ込んで欲しかったです。
WIPO著作権条約には、公衆伝達権が規定されていますから。
http://www.cric.or.jp/db/z/wch_index.html

第八条 公衆への伝達権
ベルヌ条約第十一条(1)(ii)、第十一条の二(1)(i)及び (ii)、第十一条の三(1)(ii)、第十四条(1)(ii)並びに第十四条の二(1)の規定の適用を妨げることなく、文学的及び美術的著作物の著作者は、その著作物について、有線又は無線の方法による公衆への伝達(公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において著作物の使用が可能となるような状態に当該著作物を置くことを含む。)を許諾する排他的権利を享有する。

だいたい、北朝鮮万国著作権条約を締結していません。
http://www.cric.or.jp/db/z/teike/asia.html
それに、内国民待遇ならベルヌ条約にも規定があるので、牧野先生が、万国著作権条約を持ち出す理由がわかりません。

ダウンロードの違法性

私は、ダウンロードには違法なものと合法なものとがあると考えています。
合法なものには、私的使用のものがあるとは思いますが、著作権法第30条を読むときには、白田先生が指摘されている、

  • 「コピーガードがかけられていた著作物の複製物のコピーガードが破られていることを知りながら複製する場合は、私的複製にならない」

のところではなくて、

  • 「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」

のところで読んで欲しかったです。
つまり、「社内の同好会とかサークルのように10人程度が一つの趣味なり活動なりを目的として集まっている限定されたごく少数のグループ(加戸守行著「著作権法逐条講義」より)」内でファイル交換する場合には、私的使用に該当することがある、ということを、経済産業省が言っているのではないでしょうか。

追記(8月29日)

この「ご冗談でしょう、牧野先生」は、8月21日に追記されています。