オープンソースを巡る著作権論議と知的財産政策への示唆

上記した見出しは、経済産業省 商務情報政策局 情報政策課 課長補佐の村上敬亮氏が「特技懇」誌第232号に寄稿された記事のタイトルである。
白田氏のサイトで探しものを調べているときに見つけた。
特技懇というのは、特許庁技術懇話会の略称で、特許庁の審査官、審判官及びそのOBで構成されている会だと認識している。その会誌が「特技懇」である。


オープンソースを巡る著作権論議と知的財産政策への示唆」(PDFファイル)
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/232tokusyu2.pdf
産業政策の視点から、著作権を巡る問題意識を紹介し、その上で、後半、オープンソース自体のありようについて、広義の競争政策という第三の視点を導入しながら整理されている。
オープンソース、あるいは著作権について考えている人には、特に目新しいものではないかも知れないが、再確認する意味でも一度見ておいてもいいように思った。


この寄稿文の中にも出てくるが、GPL知的財産権との問題については、(財)ソフトウエア情報センターの研究会がとりまとめ、経済産業省のサイトで公開されている研究報告「オープンソース・ソフトウエアの現状と今後の課題について」の第8章が参考になる。この研究報告は、約1年前に公表されたので、知っている人も多いと思う。
オープンソース・ソフトウエアの現状と今後の課題について」(PDFファイル)
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/1/030815opensoft.pdf


上記寄稿文に関連すると思うが、オープンソースについて産業政策的な考えについては、CNET Japanにおける末松氏によるインタビュー記事がある。
オープンソースを支援する経済産業省の狙い」
http://japan.cnet.com/column/suematsu/story/0,2000048844,20063698,00.htm
私が注目したのは、以下の文章。

久米: 「責任関係をどうするか」という本質的なことがほとんど議論されていない気がしています。例えば、特許について。特許侵害があればエンドユーザーが責任を持たなければならない可能性もあります。
 その件に関しては、ソースコードをチェックしたパテントフリーのLinuxを作り、違反コードは皆で書き直す……という手法でクリアできるだろうという人もいますが、ではそれが出来上がるまでに使っている昔のコードをチェックするシステムはどうするか、何か問題が起きたらそれを負担する仕組みをどうするのかという問題を考えていく必要があります。社会全体としてオープンソースがある種の財産だと考えるなら、OSDLがやっているように基金を集める方法もあるだろうし、保険という考えに落ち着く可能性もある。あるいは、インテグレータがそういったリスク分を上乗せするビジネスが生まれるかもしれません。

私の意見としては、基金や保険よりは、インテグレータが特許のリスクを取り、その分を上乗せするようなビジネスが妥当ではないかと思う。


以下は余談だが、私は現在、市場経済知的財産権との関係を考えているので、前掲した「特技懇」誌第232号のうち、「ポスト産業資本主義、会社、知的財産−岩井克人教授に聞く」というインタビュー記事が興味深かった。
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/232tokusyu1.pdf