「水郷」という商標登録出願

滋賀県近江八幡市が、地元農業の振興と農作物のブランド化を目指して、特許庁に「水郷」という商標の登録出願申請をしたとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030804-00003062-mai-soci
特許庁電子図書館で調べると、平成15年5月16日に、近江八幡市を出願人として、「水郷」の商標が、「あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,果実,野菜」を指定商品として出願されている。
私は商標の実務をしていないので、この「水郷」の商標が登録されるかどうか、白黒を決められない。
ある程度の実務経験がないと、法律を知っていたとしても、具体的な商標について登録されるかについて、見立てができないですから。
そうだとしても、この商標登録出願の登録可能性については、どうだろうかなあ。


まず、商標自体の検討をする前に、出願人について。
商標法第3条第1項では、「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標については、……商標登録を受けることができる。」と、なっている。
この条文は、商標登録を受けられる者は、自分の業務にかかわる商品に、商標を使用する者であるという、出願人についての要件を規定している。
この出願における出願人である近江八幡市は、粟や麦や果実や野菜などを、事業として生産、証明又は販売することを将来的にも行う可能性があるのだろうか。
可能性がなければ、第3条第1項に規定する出願人の要件を満たしていないおそれがある。
もっとも、第3条第1項に規定する出願人の要件は、厳格に解釈するものではないとされているけど。


次に、「水郷」という商標について。
「水郷」という商標は、「あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,果実,野菜」という指定商品との関係では、これらの商品の産地を表示するものと考えられないだろうか。
産地表示に該当すれば、第3条第1項第3号の規定により、商標登録を受けられない。
水郷といえば、茨城県潮来地方や福岡県の柳川地方だって水郷として知られているのだから、第3条第1項第3号の産地表示に該当するような気もするけれど。
残念ながら実務をやっていないと、産地表示に当たるか否か、ここら辺の判断がうまくできない。