著作権保護期間延長問題を考えるフォーラム 公開トークイベント vol.4

行ってきました。
http://thinkcopyright.org/resume_talk04.html
参加したのは3月のvol.1以来です。


ストリーミングで中継が見れるようですし、ネットのニュースサイトで記事も上がっています。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2007/08/24/16689.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0708/24/news037.html
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20355147,00.htm
なので概要は省略して感想を箇条書きしましょう。

  • 中山先生は始めて拝見した。はっきりとした口調で分かりやすい。中山先生が話されることには、つい首肯されてしまう。中山先生が、期間延長に反対していることは、少なからず影響すると思う。
  • 久保田氏は話せば分かる人と思った。エンフォースメント重要。契約ベースのバランスからの日本モデルの提案。
  • ドミニク・チェン氏はプレゼンテーションが綺麗。クリエイティブコモンズの理由については、私は本を読んでいたで、有る程度は理解できた。


延長問題について

パネラー間で、延長賛成、反対という対立軸はなかった。
中山先生の話から伺えるのは、延長賛成の人の主張は、ロジカルな点で延長反対の人に負けているように見えること。三田氏等の発言である「恥ずかしい」等のワードについて、今回出席されたパネラーに賛同が得られていないように見えた。
延長されることは、結局はお金の問題とは切り離せない話で、そして、「自分のお金のためだろう」というような反発が利用者から出るのは容易に予想できる。そういう反発があったとしても、お金の問題であることは是認しつつ正面から議論をすることが好ましいと思うのですけれど。
三田氏が恥ずかしさを問題とするのは、お金の問題を避けようとしているからではないでしょうか。

非親告罪化について

久保田氏が、非親告罪化する意味が分からない旨を言われたのが印象的だった。
私は、中山先生が発言された知的創造サイクル専門調査会(第8回)議事録の記述と同様に、非親告罪化されても、さほど変化がないだろうと予測しています。

親告罪なんですけれども、これはちょっと考え直す必要があるのではないかと思います。ただ、結論的に言いますとどちらに転んでも社会はそれほど大きく変わらないだろうと思います。

知的創造サイクル専門調査会(第8回)議事録

久保田氏が非親告罪化は反対というのであれば、非親告罪化はしなくてもいいと思った。

国際的調和について

中山先生が、ベルヌ条約により国際的調和は取れていると言われた。
それは確かにそうだと思ったんだけど、国際的に著作物が流通する今日に、保護期間が20年も違っていて、不都合は生じないのだろうかと気にかかった。
……既に50年を超える保護期間になっている国にとっては不都合があるだろう。
例えば、「ローマの休日」の映画は、日本では保護期間が切れているだろうけど、アメリカでは切れていない(たぶん)。日本で複製した「ローマの休日」のDVDをアメリカに輸入しようとすると、水際で規制されるだろう。しかし、この「ローマの休日」のDVDのファイルを日本のサーバーに置いて、アメリカ人にダウンロードさせた場合には、規制されないだろう。それってアメリカにとっては著作物の保護に関して不整合があるように思われる。
日本は保護期間が現在は50年だから、そのような不整合はない。
じゃあ、日本で保護期間を延長するのはなぜかという話になる。
それは自分では答えが出せないのだが、一般的に、外国に輸出され外国で売れる著作物については、保護が厚くなることは国益に沿うと考えられる。
(「国益」とはなんぞやという話は抜きに、あくまで一般論として。)
トークイベントの最後に、中山先生が著作権の南北問題を話されたけど、一般的に、自国の著作物を多く持っている国は保護が厚いのが国益に沿い、自国の著作物が少ない国は保護が薄いのが国益に沿う。日本は国際的に、どのような立ち位置にあるのだろうか。

トークイベントの話から離れた見聞感想。

白田秀彰先生が逆説的な話で外圧による保護期間延長に反対を述べられた。
私は、逆説的な言い回しが、好き嫌いでいうと好きではないですけど、トークイベントに参加するような、著作権意識の高い人には、すんなり受け入れられたと思う。
下りのエレベータで一緒だったけど、無名な私は声をかけられなかった。


中山先生は懇親会に出席されたのだろうか。お話したいとは思ったけど、お話できたかも分からないし、知り合いがいなかった私は出席をためらった。


著作権法は、保護と利用のバランスが大事といわれるけど、平衡状態の視点が権利者と利用者では異なっているのではないか。保護期間延長というと、一方的な保護強化であって、バランスが保護に傾くという視点もあるだろうけど、現在のデジタル化、複製容易な状態が利用に傾いているから、好ましい平衡バランスの方向に向けるために保護期間延長という視点もあるのではないか。


期間延長に賛成、反対という対立構造では、議論が平行線かも。賛成派、反対派と色分けして議論するのは分かりやすいけど、原則論に終始する気がする。別に歩み寄れとは言わない。でも、ドミニク・チェン氏のプレゼンテーションでクリエイティブコモンズがプロとアマチュアの境界を埋めるものだという話があったように、保護期間を延長したときに著作物が死蔵されないための活用法について、もっとアイデアが出てもいいと思った。
良い悪いは別として適当に、

  • 保護期間を延長する著作物を遡及適用せず、法改正後に生じた著作物のみにする
  • 外国で売れるアニメや漫画のみを保護期間延長する
  • 著作者不明の著作物については、ノーティスアンドテイクダウンで処理する

日本だと細かく規則を作っておいて、現場では柔軟な処理をするほうが性に合っている気がするので、ノーティスアンドテイクダウンで処理するのは向いていないかも。

最後に

トークイベントを企画してくださった主催者の皆様、どうもありがとうございました。