著作物の並行輸入品についての税関における取り扱いの予測

いわゆるレコード輸入権が創設された場合に、並行輸入品の音楽CDを税関がどう取り扱うのかは、特許製品の並行輸入品の場合の取り扱いが参考になると思います。
これについては、弁理士会のサイトに記述があるのを最近見つけた。
http://www.jpaa.or.jp/ip-information/gyoumusuishin/parallelimport_treatment.html

平成9年7月の最高裁判決(いわゆるBBS事件)以降、税関では特許権に係る並行輸入は、特許権者等と、譲受人との間で特許製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意であって、かつ、その旨が製品に明確に表示された場合を除き、知的財産権の侵害にはならないものとして取り扱われることになりました。

おそらく、輸入権が創設された場合の並行輸入された音楽CDの取り扱いも、同様になると思います。
音楽CDのジャケットに、国内頒布禁止の表示がされていない場合は、差し押さえられない。
音楽CDのジャケットに、国内頒布禁止の表示がされている場合は、輸入数量により、国内頒布目的が推量されるかどうかによる。個人輸入のように数量が少なければ差し押さえられないのではないか。


私の予測は上述のとおりですが、根拠条文等について、もう少し書きます。
知的所有権を有する製品の輸入取締りは、関税定率法第21条第1項が根拠になるようです。

(輸入禁制品)
第二十一条  次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
  一  麻薬及び向精神薬大麻、あへん及びけしがら並びに覚せい剤覚せい剤取締法 (昭和二十六年法律第二百五十二号)にいう覚せい剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
  二  けん銃、小銃、機関銃及び砲並びにこれらの銃砲弾並びにけん銃部品。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
  三  貨幣、紙幣若しくは銀行券又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品並びに不正に作られた代金若しくは料金の支払用又は預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)をその構成部分とするカード
  四  公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
  五  特許権実用新案権意匠権、商標権、著作権著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品

この条文に従う実際の運用については、関税定率法基本通達を見なきゃ分からない訳で。
google:関税定率法基本通達と検索して見つけた次のページ。
http://members.jcom.home.ne.jp/masao-yagi/newpage66.htm

(商標権等に係る並行輸入品の取扱い)
21-7 商標権等に係る並行輸入品の取扱いは、次による。
(1)商標権に係る並行輸入品の取扱い
(中略)
(2)特許権に係る並行輸入品の取扱い
 イ 我が国の特許権者又はこれと同視し得る者(以下この項において「特許権者等」という。)が国外において適法に拡布した特許製品が、特許権者等又は当該製品を輸入する権利を有する者以外の者によって輸入される場合において、次の場合以外の当該製品は特許権の侵害とはならない並行輸入品として取り扱うものとする。
 (イ)輸入者が譲受人であゃときは、特許権者等と譲受人との間で当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意がされた場合
 (ロ)輸入者が譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者であるときは、特許権者等と譲受人との間で当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意がされた場合であって、かつ、その旨が当該製品に明確に表示された場合
 口 上記イにおいて、特許権者等と譲受人との間で当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意がされたことを確認するための資料とは、契約書又はこれに類する文書で、販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意があることを確認できる資料をいう。
 ハ 上記イの(ロ)中「その旨が当該製品に明確に表示された場合」とは、当該製品の取引時において、製品の本体又は包装に刻印、印刷、シール、下げ札等により、通常の注意を払えば容易に了知できる形式で当該製品について販売先ないし使用地域から我が国が除外されている旨の表示がされている場合で、当該製品の取引時にはその旨の表示がされていたことが輸入時において確認できる場合をいう。
(3)実用新案権及び意匠権に係る並行輸入品の取扱い
 上記(2)の規定は、実用新案権及び意匠権に係る並行輸入品について準用する。